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女児レスリング選手における体力の発達特性とは?

日本トレーニング指導学会学会誌から、「身長発育からみた小学生期女児レスリング選手における体力・運動能力の発達特性」と題した研究論文が発刊されました。詳細は、本HPの「reseach report」もしくは、日本トレーニング指導学会発行の「日本トレーニング指導学会学会誌第5巻第1号」をご参照ください。 

今回の研究論文は以前に発刊された論文「身長発育からみた小学生男児レスリング選手における体力・運動能力の発達特性」の女児版です。以前の記事・論文はこちらを参照ください。

今回も前回同様、分析方法はアロメトリーという少し難しい手法を用いました。

男児は以前に報告したとおり、「①前方への瞬発力、敏捷性、タックル動作の発達は似ている」「②前方への瞬発力、敏捷性、タックル動作の発達は、思春期ピークを迎える直前まで継続して発達する」という2点の可能性が示唆されておりました。しかしこのことは、女児についても同じ現象が起きているのでしょうか。この問いが今回の論文の出発点です。

 

基本的に女児は男児と比べると、発育につれて体組成に大きな変化がみられます。体組成に変化が現れるということは、「同じトレーニングをしていても性別が変われば男児と違う効果が考えられるのではないか」と考え、分析を進めたところ、論文にも記載があるように女児は以下のことが示唆されました。

 

①前方への瞬発力と方向転換能力の発達は相似である。

②タックル動作の発達は、思春期ピークを迎える直前まで継続して特に発達する。

 

驚くことに、男児ではタックル動作が前方への瞬発力と方向転換能力と相似でしたが、女児ではこの発達はみられませんでした。また、男児はタックル動作が思春期ピークまで発達することが示唆されていますが、女児は思春期ピークを迎える直前まで発達することが示されました。要するに、女児と男児ではレスリングのトレーニング効果が異なることが考えられるということです。

 

昨今、オーバートレーニングからくるケガの予防や、過度な練習からくるバーンアウトに視点を当てることが、発育に応じた指導として注目されておりますが、このこと以外にも、指導現場では性差を考慮することが重要であると考えます。具体的には、女児と男児がともに練習する場合において、あるトレーニングは女児は得意だが男児は不得手にみえる場面があった場合、その背景にはトレーニングが体力に与える効果が男女で異なることに起因している可能性があることから、指導のアプローチを男女で変えることが必要かもしれません。これらのことに配慮しながらトレーニングを計画することはとても難しいことですが、健全な発育を考えたうえでのトレーニングにおいては、このことも注視していく必要があるのかもしれません。