実はレスリング競技には、小学校体育を補完していることや、児童の運動習慣の一助を担っている可能性があり、さらに、レスリング競技に継続的に取り組むことが、小学生児童の身体リテラシーの発達に寄与している可能性があることが、この研究で明らかになりました。
詳細は、日本コーチング学会発行の「コーチング学研究第35巻第1号」をご参照ください。
小学生の視点に立つと、児童は小学校の義務教育を受けながら、課外活動であるレスリングに取り組んでいます。すなわち小学生児童は、「小学生」と「レスリング選手」という2つのキャリアを同時に歩んでいることがわかります。このことから、児童の一つのキャリアである「レスリング選手」に対する競技力向上だけでなく、もう一つのキャリアである「小学生」の、小学校の義務教育に関係する効果に着目して研究を進めました。義務教育の中には国語、算数など多様な科目がありますが、その中でも本研究は、「体育」に対する運動有能感への効果について論じた研究となります。
研究の結果、3因子(身体的有能さの認知・統制感・受容感)で構成される運動有能感は中学年(小学3・4年生)から効果を示し、冒頭に示したとおり、レスリング競技には学校体育を補完する効果や、肥満を予防するための運動習慣の一助を担っている可能性があることが明らかとなりました。さらに本研究では、運動有能感を身体リテラシーを構成する一部分と定義したことから、身体リテラシーの発達にレスリング競技の継続が寄与している可能性が示唆されました。しかしながら良い面だけではなく、運動有能感を構成する「受容感」はレスリング競技の効果を示さなかったことから、この部分の効果をいかに高めるかが、これからのレスリング競技の課題になるかもしれません。
少し難しい内容かもしれませんが、レスリングには競技力向上以外の様々な効果が明らかになったことから、このことが、日本のレスリングの普及に少しでも役立てばと願います。
最後に、本研究にご協力いただいたすべての小学生児童、その保護者のみなさま、チームの指導者のみなさまに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
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